「独立を考える前に知っておきたい」 自営15年の経験者の意見

為になる

ここ数年で独立を考える方が増えている感じがする。
特にデザイン業界、WEB業界などのように、在宅で作業が可能な業種はわざわざ出社しなくてもよいという点から独立に踏み切る方が多い模様。
そこで自営になるとどんな特徴があるのかを再度確認してみたいと思う。

自営におけるメリット

身体の弱い人にとっては最適な働き方

私も実はそうなのだが、身体がそんなに丈夫ではない。年に数回風邪をひくし、雨の日は身体が重たくて仕事どころではないほど頭が重い。花粉の季節には頭がぼーっとして回転が鈍り、冬の季節は適温になっていない部屋ではトイレが近すぎて困る。そういった他の人に迷惑をかけたくないが、身体が弱いから気を使ってしまってストレスだという人には最適な働き方である。

家族の予定に合わせやすい

自分の空いた時間で作業ができるので昼間家庭の用事、主に子供の行事に参加しやすい。特に運動会や参観会などにはほとんど出席可能になるのはうれしい。

経費をうまく使えば、家庭での支出を抑えられる

基本的に家庭で使うものは経費にはならない、しかし仕事で使用していたパソコンや周辺機器、また掃除機といった家電製品も買い替え時に古いものを家庭に回すことで家庭での支払いは抑えることができる。
※ 厳密には家庭に回す際に家庭で機材を買い取る形式をとるが、細かな取り決めは税理士と相談されてほしい。

所得に応じて退職金の貯金ができる

ちょっとわかりづらいかもしれないが、個人事業主には退職金というものがない。しかし「小規模企業共済」や「銀行」などで、毎月経費として落とせる積立貯金のようなものがある。これを利用することで毎月数千円~数万円までが経費として貯金していくことができる、また商売をやめたときに貯蓄していた金額をまるまる受け取ることができる、もちろん税金はかからない。

自営におけるデメリット

仕事の波がある

当然ながら仕事が取れる時と取れないときの波がある。この波を超えられるメンタルを持っているかどうかが重要となる。月の売り上げが0円の月もひょっとしたらあるかもしれない。そんな時でも動じず対策や次の手を打てる能力を持っていることが大切。

ローンが組みづらい

自営業者は基本的にローンが組みづらい。銀行などは過去数年の業績などをもとに貸出金額を算出するが、自営をはじめて数年の個人事業主には担保が大きくなければ貸し出しは不可能だと思った方がよい。
借り入れは、積み立てておいた小規模企業共済などからも借り入れることができる。

入院怪我による休業

一人で仕事をするうえで最大のデメリットは、この病気怪我ではないかと思う。入院でもしてしまえばその月の収入は激減する。とにかく休んだ時間分収入がなくなるのだから病気怪我などしていられない。その分健康面には相当気をつかうことになる。

孤独に感じることも

家庭を持っていない人にとっては孤独以外の何物でもない。地元に暮らしているのであればまだ仲間に会いに行けるだけましだが、年を重ねるごとに周りの仲間が結婚し遊びに行かなくなるといよいよ孤立する。個人事業者はそもそも出逢いがないのでかなり頑張って婚活していかなければならないだろう。仮に婚活したとして、相手の方が同じような業種の方ならばベストだが、個人事業主のように不安定な収入を気にする親の相手だとなかなかうまくはいかない。

将来的な不安

この仕事をあと何年やっていけるだろう、このまま仕事が安定しているだろうか、急に取引先が仕事をくれなくなったらどうしよう、そういった不安は常につきまとう。だからこそ前もっていろいろな方面からの策を打っておく必要がある。個人事業主にとって「自由」は武器だ。もしあなたが実家に土地を持っていたり一軒家に住んでいたりするのであれば、それらを利用して別の店舗を構えることだってできる。料理やプログラミング、ピアノにヨガなどといった趣味特技があるのであれば、それらのスキルを伸ばしておくことも後の安心材料となるかもしれない。

保険料・年金・市民県民税など

自営業を営む上で数字に強い必要がある。まずは最低売り上げボーダーを知っておかなければならない。例えば給料を30万にしたいとする。すると年間で360万は税金等を除いて確保しなければならない。個人的な私の感覚では給料30万を毎月確保したいのであれば、少なくとも毎月50万以上あわよくば60万の売り上げは欲しい。生活費以外に20万も余裕があればよいだろうと思うかもしれないが、20万×12か月で240万以上が税金や経費でほぼ消えると思ってよい。
これはあくまでも例ではあるが、おおよその数字として参考例をあげてみる。

国民年金 18万/人(夫婦なら36万)
国民健康保険 約50万(所得に応じて変動)
市民県民税 約40万(所得に応じて変動)
固定資産税 不動産所得者のみ土地・建物の大きさによって変動
個人事業税 15万程度(所得に応じて変動)
所得税 25万程度(所得に応じて変動)
生命保険料 20万程度(年齢や契約内容による)
火災保険等 不動産がある場合
消費税 課税事業者の場合(課税売上1,000万以上の2年後)
会計事務所 36~60万
自動車税・自動車保険 25万
小規模企業共済 12~84万(掛け金による)
光熱費 24万程度
交通費 12万(打合せ時など)

などがあげられる。どうだろう世帯を持っている家庭の場合はこれに保育料などが所得によって変動したり、子供の塾などを頭に入れると生活費の30万よりも多めにとっておきたい。もちろんこの生活費は貯金もしなければならないので家計はかなりきつくしなければならない。さらに会社と違って「ボーナス」がない。

不動産屋を始めた知り合いのハナシ

リーマンショック後、落ち込んだ景気の中独立開業をした不動産屋の知り合いがいた。不動産屋という業種は1件でもアパート入居者がいてくれれば毎月固定の収入が入る。うまくいけばものすごくおいしい商売だ。もちろんそのためには資格を取っておかなければならないし、なにより下積み経験が必要だ。開業するのも簡単ではなかっただろう。やっとの思いで彼は独立にこぎつけたのだ。

彼が開業して最初の月、彼はまずアパートのオーナーと契約するために営業に回る。さらに許可をもらったアパートの写真を撮影しネットに情報を入力する。とにかく最初の月はこれを何度も繰り返した。
次の月もまた新しい案件を見つけてはネットに掲載、たくさん見てもらえるように写真を多めに掲載した。パートを雇いネットへの掲載と撮影の補助を任せた。
その翌月もまた写真を撮っては掲載という作業を繰り返した。彼はとても忙しそうにしていた。
その翌月もまた掲載の為に彼は物件を回り撮影を繰り返した。ガソリン代もかなりのものとなった。
開業から5か月目、初めて電話で問い合わせがあった。彼は喜んで接客したが、なんだか感触はいまいちで結局契約には至らなかった。
いよいよ半年が過ぎて、貯金も残りわずかとなってしまった。パートの子も雇える状態ではなくなってしまったので辞めてもらうことにした。
その後彼と会う機会がなくなってしまったので、その後のことはわからない。しかしあのままいっていたら今ごろは倒産しているかもしれない。

何がいけなかったのか

彼の店を写真で見せてもらったことがある、賃貸物件でそれほど新しさはなかった。プランターを置いて花を植えてあったがかえって清潔感がなかったのかもしれない。
不動産業界は大手がインターネットの検索上位を占めるため、中小の不動産屋が途中から参入しようとしても自社のサイトを見つけてもらうことすら難しい。
とにかく彼のお店は誰にも知られていなかったというのが最大の原因ではないかと思う。
ではどうするべきだったのか。
おそらく彼は開業する前から下準備をしておくべきだったのだと思う。会社員であったならば、その時代の休日を使って少しずつ物件の調査、ネットの最適化、知名度アップのための策の考案、これらをやっておけさえすればもう少し状況は変わっていたのではないだろうか。

もちろんそれ以外にもやっておいた方がよかったことはたくさんある、それはまた別の機会にでも書くことにする。

個人事業主になりたいならば、今からこれだけは用意しておくこと

まずは今のスキル以外にも多くのスキルを身に着けておくこと。一つの業種が仮にダメになってしまっても「他のスキルがある」ことで不安は軽くなる。不安を抱える事業主は必ず失敗する。なぜならば不安は不安を相手に伝えるからだ。相手があなたに不安を感じればあなたと仕事をしなくなってしまう、そうなってしまわないためにも独立する前にもう一つだけあなたのスキルを増やしておくことをお勧めする。
約8万件の講座を紹介するケイコとマナブ.netで、あなたのスキルを増やしてみてはどうだろうか。

まずは何があるのか、何ならできそうなのか、開業する前にもう一度考えてみることが大切だ。

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